卒業論文の第0稿の作り方
はじめに_
卒業論文を先輩や指導教員に見せてよいのは第1稿からなので注意すること。
第0稿は、卒業論文にどういうことを書くのかを粗く理解し、とりあえず「卒業論文」というものを形にするために作るものである。
第0稿が満たすべき条件は以下のとおり。
- 情報システム工学科の卒業論文の体裁を満たしている
- どの章・節に何を書くのかがだいたい決まっている(文章の質は低くてよい)
- 図、表、例題、ソースコード、数式の配置がだいたい決まっている(質は低くてよい)
第0稿は構成案を作成した後につくるものなので、構成案についてOKをもらっていない場合は、構成案を先につくること。
また、まだテンプレートを使用した表紙と参考文献リストを作っていない人はそちらから行うこと。
作業の流れ_
- 先輩の修士論文原稿の入手
- 章・節・小節の作成
- 図、表、数式、ソースコードの作成&貼り付け
- コピペ
- 文章の執筆
先輩の卒論原稿の入手_
研究室のファイルサーバより自分の研究とある程度似ている(特に構成や話の進め方が似ている)先輩の修士論文のLaTeXソースファイルを入手する。
使用目的は以下の通り
- LaTeXのコマンドを真似する(特に、参照のやり方や表や図)
- 概要や本文の書き方の真似する
- 専門用語や概念の説明を真似する
- 数式を真似する
卒業論文を参考にしないのは、卒業論文は多くの間違いを含んでいる可能性があるため(修士論文にも間違いは含まれているが、まだまし)。
章・節・小節の作成_
次に、構成案で作った章・節・小節のタイトル、トピックセンテンスを卒業論文の原稿にコピーする。
- 章・節・小節のタイトルを構成案からコピーする
- 各章、節、小節のそれぞれのトピックセンテンスをコピーする。
- 章・節・小節のタイトルの横にラベルを付ける(つけ方は先輩の修士論文のLaTeXソースを真似する)
後藤の場合は\label{chapter:〜}、\label{sec:〜}、\label{subsec:〜}という名づけ方をしている。
LaTeXの場合は、この時点で目次が作成される。PDFを作成し、論文の体裁を眺めてみる。
図、表、数式、ソースコードの作成&貼り付け_
論文で必要となりそうな図、表、数式を作成する。また、必要に応じて、ソースコードを貼り付ける(アルゴリズムを表すために擬似コードを作成する)。構成案と研究の成果(実験結果、調査結果、理論式、ソースコードなどなど)を眺めながら、必要そうな図、表、数式、ソースコードを作成する。
図や表を作るのに時間がかかりそうな場合は、空の図や空の表を張り付けて置き、先に図と表のキャプション(タイトル)とその図や表の説明だけを書いておく。考えが固まったら、後から図や表を作成する。
また、ラベルも貼り付け、本文中で参照できるようにする。後藤は以下のようにラベルを命名している。
- 表:\label{table:〜}
- 図:\label{fig:〜}
- 式:\label{equation:〜}
- アルゴリズム: \label{alg:}
PDFファイルを作成して眺める。
注意! 他の文献に載っている図や表をそのまま使ってはいけません。自分が作ったWebアプリケーションのスクリーンショットを除き、Webページからダウンロードしてきたりするのもいけません。
コピペ_
どういうことを説明するのかの検討をつけるために論文に「必要そうだと思う」文章を他の文献からコピペする。ただし、どの文章がコピーしてきたものであるのかがわかるように印をつけ(たとえば鍵かっこで囲っておく、あるいは太字にしておく)、そして、その出典はメモしておくこと。
最初の段階は、剽窃を気にしないで論文に必要そうな事柄は手当たりしだいコピペしてよい。また、コピペ元の文が日本語だろうが英語だろうが、常体(~だ、~である)でかかれていようが敬体(~です。~ます。)でかかれていようが気にせずとりあえずコピペしてよい。
先にダウンロードしておいた先輩の修士論文も大いに活用すること。ただし、以下の点に注意すること。
- 修士論文に記載されている内容は間違っている可能性が高いので必ず元の出典の記述を確かめること
- 孫参照(大元の論文でなく、その論文を引用、参照している論文を参照すること)はしないこと
- 引用、参照したい部分について外部発表論文がある場合には、卒業論文や修士論文を出典とせず、その外部発表論文を出典とすること
コピペ手順
- 元の原稿において流用できそうなところ以外は削除する
- 流用できそうな部分を適切なトピックセンテンスの説明センテンスとして配置する
- 参考文献からトピックセンテンスの説明センテンスとして必要そうな部分をコピペしてくる
次に加工する。
- すべての文を常体にそろえる
- 同じ事柄は同じ用語を使うように表現を整える
- 一言一句まるごと使う場合:引用符で括り、参考文献を引いて引用として使う
- 要約してつかう場合:要約した事実や主張を誰がしているのかを示すために参考文献を引く。なお、要約というのは元の文の語尾を変えたり、語順を入れ替えたりすることではない。その程度の変更の場合には元の文を引用符で囲い引用する。
- 数段落におよぶ多段的な用語・概念の説明する場合:前後の段落と表現をあわせた上で「文献~に従い、***について説明する。」と記述した上で説明する。ただし、自分の手法や成果を読者が理解するのに必要となる部分のみ記載すること。
- 文の構成だけ使う場合:現象の説明の仕方などは決まりきっているので、単語や数値を置き換えて使う。
- 文章の構成だけを使う場合:テーマによって話の展開を流用できるので文を置き換えて使う
この時点では、説明不足や論理の飛躍など不自然な点が多く残っていると思うが、気にせず作業を進める。
一番、書きやすいのは2章~3章あたりにある先行研究や用語、概念の説明部分、次に自分の手法の説明(要求分析、機能定義、実装)だと思うので書きやすいところから書き始めること。一方で、1章「はじめに」「評価」「おわりに」などは書きづらいので後回しにしてよい。
ひととおり、埋め終わったらPDFファイルを作成し、両面印刷で印刷する。
文章の執筆_
色付きペンを用意する。印刷したものを音読する(声に出せない環境でも心の中で声に出して読み上げる)。すると、誤字・脱字、論理の飛躍、説明不足、意味不明な部分に気づくはず。きづいたことを印刷した原稿にすべてメモする。LaTeXファイルの編集を逐次してはいけない。必ず、頭からお尻まで読み切ること。
お茶でも飲んでちょっと休憩してから、もう一度、音読する。そして、メモする。
この原稿に書かれた不備をすべて潰すことを目的として、文章を追加していく。修正の順番は頭を使わないものから順番に直していくのが良い(書式の修正→誤字・脱字の修正→図・表・数式などの修正→論理の飛躍や説明不足の修正)。
すべて終わったらPDFファイルを作成する。これで、第0稿の完成となる。
第1稿へ_
この時点で第0稿が満たすべき条件を満たしているはず。
- 情報システム工学科の卒業論文の体裁を満たしている
- どの章・節に何を書くのかがだいたい決まっている(文章の質は低くてよい)
- 図、表、例題、ソースコード、数式の配置がだいたい決まっている(質は低くてよい)
第0稿を先輩や指導教員に見せてはいけない。一晩寝たあと、自己チェックリストでチェックし、第1稿に仕上げる。
先輩および指導教員に見せて指導を受ける_
先輩や指導教員にアポイントメントを取ったうえで第1稿を指導してもらう。その際には以下のように準備すること。
- 論文は片面印刷する
- ホッチキス(ステップラー)でとめられる場合は、左肩一か所をとめる。ムリならばクリップで左肩をとめる
- 論文を渡す日付、論文のバージョン(第何稿なのか)、誰に渡したのかを区別できるようにする
たとえば、2016年1月15日に第1稿を後藤に渡す場合には「2016/1/15 第1稿 後藤先生」と論文の表紙に手書きしておく
2回目以降は、前回指導を受けた原稿も合わせて渡すこと